海外留学という目標を決めたものの、全く異なる世界に飛び込んで行きますので何の準備をしたら良いのか漠然としてしまいます。必要な資格は?給料はどうなるのか?目標を達成するまでには先日の記事でも述べたように目標までの具体的なロードマップ作成が必要になってきます。今回はヨーロッパの病院、特にドイツでカテーテル治療を行えるようになるまでの必要な語学力などについて調べてみましたので挙げさせて頂きます。実際に行っていない人間があくまで夢へのロードマップとして調べて書いたものですので不確かな情報もあるかもしれません。不備あればコメントなどで教えて頂ければ幸いです。
・まずは英語を話せるように。IELTS6.5以上
・ドイツ語能力証明B2 or C1以上
自分の目標はただ海外留学に行くというものではなく、「ヨーロッパの病院で日本で行われていないカテーテル治療を実際に臨床医として行いそれを持ち帰る」という目標があります。そのため向こうの病院で研究員としていくだけでなく、臨床医としても必須なスキルを身につけなければなりません。
・まずは英語を話せるように。IELTS6.5以上
ヨーロッパで医学留学するには現地の英語以外の言語も習得しなければなりませんが、まずはやはり英語も必須かと思われます。現地の施設との交渉や、論文執筆・学会発表となると世界共通語の英語は欠かせません。
以前から留学したいなぁと漠然と英語の勉強はしていて自分が働いている病院には時々ドイツの医学部の留学生が来ることがあり、彼らに治療内容の紹介や案内などする機会がありぼちぼち話せるようにはなってきていますがペラペラとは程遠いです。自分の中で英語レベルの最終形態は海外学会などで欧米の医師たちと間に混ざって議論を交わすことができるレベルです。
自分はこのPCRというカテーテル治療関連の学会を紹介しているYoutubeチャンネルで時々、情報収集+英語のリスニング目的で見ることがあります。このチャンネルでしばしば日本人でも有名な循環器の先生が海外の人と混じってDiscussionしているのをお見かけしますが、かっこいいですね。なんとか自分もその一員になれたらと思いますがまだまだ道は遠いです。
英語勉強は継続しているものの、いまいち目標や明確なゴールがないと中々自分の成長の実感もできずモチベーションが下がってきてしまいます。英語の資格として英検やTOEICが有名で社会人の方でも受けておられる方がしばしば見かけますが、自分としては話せないと英語の勉強をしていても意味がないなとひしひし感じております。そのため英語を話す能力を重視していると言われヨーロッパの大学に留学する際に必要な資格としても使われているIELTSを受けてみようと思いました。IELTSを受けたことがなく周りでも受けた人がいなかったのでIELTSの特徴など調べてみました。
IELTSのバンドスコアと英語レベル
- Band 0: 試験を受けていない、または評価不可能な状態(無回答など)。
- Band 1 (Non-User): 英語をほとんど使用できない。数語の単語しかわからないレベル。
- Band 2 (Intermittent User): 英語の理解や使用が非常に限られている。非常に簡単な情報のみのやり取りが可能。
- Band 3 (Extremely Limited User): 日常の状況での基本的な理解は可能だが、頻繁にコミュニケーションが途切れる。
- Band 4 (Limited User): 日常の状況での基本的な英語の能力を持つが、頻繁な誤解があり、複雑な言語の使用には困難がある。
- Band 5 (Modest User): 部分的な英語のコマンドを持ち、特に馴染みのある状況ではある程度の理解とコミュニケーションが可能。多くの間違いがあるが、基礎的な意味の理解はできる。
- Band 6 (Competent User): 全体的に効果的なコマンドを持ち、特に馴染みのある状況での複雑な言語の使用が可能だが、いくつかの間違いや誤解がある。
- Band 7 (Good User): 英語のコマンドが良好で、複雑な言語を扱う能力があり、偶然の間違いや誤解が発生することはあるが、全体的に詳細な理解とコミュニケーションが可能。
- Band 8 (Very Good User): 英語のコマンドが非常に良好で、ほとんど誤解や間違いがない。複雑で詳細な議論や議題も扱えるが、わずかな不正確さが見られることもある。
- Band 9 (Expert User): 英語を流暢に使いこなせるネイティブレベル。ほぼ完璧な正確さと流暢さを持ち、誤解や誤りがほとんどない。
IELTSの特徴とメリット
- ヨーロッパの大学での認知度が高い: 多くのヨーロッパの大学、特にドイツ、イギリス、オランダなどではIELTSが主流の英語能力試験とされています。ドイツの大学もIELTSを認可しているところが多いです。
- アカデミックとジェネラルの2種類: 大学留学を目的とする場合は、IELTS Academicを受験する必要があります。これはアカデミックな英語力を評価する試験で、大学での授業や研究に必要な英語力を測定します。
- ヨーロッパでのスコア要件: 多くのドイツの大学はIELTSのバンドスコア6.0〜7.0を要求しています。特に、英語で授業が行われるコースやプログラムでは、各セクションの最低スコアも設定されていることがあります。
このように留学にあたってはIELTSの6〜7が最低限の目標かと思われます。自分の英語能力はIELTS4(日常の状況での基本的な英語の能力を持つが、頻繁な誤解があり、複雑な言語の使用には困難)くらいじゃないかと思うのですが今年2024年12月にIELTSの試験に申し込みしましたので、今年はIELTS5(部分的な英語のコマンドを持ち、特に馴染みのある状況ではある程度の理解とコミュニケーションが可能)を目標に勉強しています。
・ドイツ語能力証明B2 or C1以上
まだドイツに留学するとも決まった訳でもなく、ドイツの病院へのコネも全くありませんが自分の中でヨーロッパ留学するなら最新治療デバイスの開発も盛んなドイツかと思っています。自分の病院ではドイツから来る留学生と話す機会があり、カテーテル治療を英語で説明したり一緒に飲みに行ったりもします。ドイツの病院での年間のカテーテル治療件数を聞くとTAVIだけでも年間600件と件数が本当にものすごいです。自分の病院は50件前後で日本のカテーテル治療で有名な病院でも300件ほどと聞いています。また自分が勝手に憧れている先生がドイツに留学されていて現在、三尖弁のカテーテル治療を行っているとあり何としてでもドイツに行きたいと思っています。
ドイツに行った場合に最初は臨床医ではなく研究員としての肩書きで行くことになると思われますが目指すは臨床医としてドイツで働くことです。自分は日本では循環器専門医、カテーテル治療認定医、TAVI指導医まで取得していますが、ドイツでカテーテル治療を行うにはどのようなキャリアで進んでいくことになるのか調べてみました。ドイツの医師としてのキャリアは主にAssistenzarzt(研修医)、Facharzt(専門医)、Oberarzt(上級医)、Chefarzt(部長医師)という順番に進んでいくようです。
ドイツの医師としてのキャリア
- 医学部卒業 → Assistenzarzt(5〜6年の研修期間)
- Facharzt試験合格 → Facharzt(専門医)として独立診療可能
- Facharztとしての経験を積む → Oberarzt(上級医)に昇格
- Oberarztとしての経験を積む → Chefarzt(部長医師)に昇格
ドイツでもカテーテル治療を行えるようにはFacharzt(専門医)、Oberarzt(上級医)を取得する必要がありますが、日本でもう専門医をとっている自分としてはこのAssistenzarzt(研修医)としての過程はすっ飛ばしたいところです。
1. ドイツでの医師免許(Approbation)の取得
まず、ドイツで医師として働くためには、ドイツの医師免許(Approbation)を取得する必要があります。日本での医師資格を持っていても、直接ドイツでの免許に置き換えられるわけではなく、以下のステップを踏む必要があります。
- 書類の認証と翻訳:日本の医師免許や学位証明書をドイツ語に翻訳し、ドイツの関係当局に提出します。
- 資格の審査:ドイツの州によって異なりますが、日本の医師資格がドイツの基準と同等であるかが審査されます。必要に応じて、追加の試験を求められることがあります(Kenntnisprüfungと呼ばれる知識試験)。
2. ドイツ語の習得
医師として働くには、高度なドイツ語能力が必要です。一般的にB2レベル、場合によってはC1レベルの言語能力が求められます。さらに、Fachsprachprüfungと呼ばれる専門的な医学用語の試験も受ける必要があります。これに合格しないと、医療現場で働くことができません。
※ドイツ語能力試験
A1: 基本的な挨拶や自己紹介ができ、単純な会話に対応できるレベル。
A2: 身近な話題での簡単な会話ができ、日常生活に必要なフレーズを使えるレベル。
B1: 日常生活や旅行での会話ができ、経験や意見を簡単に説明できるレベル。
B2: 幅広い話題について議論し、専門的なやり取りもこなせる中級上位のレベル。
C1: 複雑な話題を流暢に理解し、詳しく議論や意見交換ができる上級者レベル。
C2: ほぼネイティブと同等のレベルで、微妙なニュアンスまで使いこなせる熟練者レベル。
3. 専門医資格の認定
日本で循環器専門医を取得している場合、ドイツの医師会にその資格の認定を申請することが可能です。ドイツでは、日本の専門医資格が直接認められることは少なく、通常は追加の研修や試験が求められることがありますが、すでに高い専門性を持っているため、研修期間が短縮されることがあります。
- Facharztの道:循環器科の研修医として数年間の実務経験を積んでいる場合、最短で残りの必要な研修期間を修了し、Facharzt試験に合格することで専門医資格を取得することができます。
- Oberarztの道:日本での豊富な経験が認められれば、ドイツの病院でFacharztとして採用され、実績を積んだ後、早期にOberarztへ昇格することも可能です。ドイツの病院によっては、日本での実績や研究活動を評価し、Oberarztのポジションを早期に提供されることもあります。
4. 病院での勤務と経験の積み重ね
ドイツでの医療制度や文化への適応が重要です。ドイツの病院で一定期間勤務し、現地の医療システムやチームとの連携を深めることで、昇進やポジションを獲得する道が開かれます。
最短でFacharztやOberarztになるためのポイント
- ドイツ語の習得:早期にB2レベル以上のドイツ語力を身につけ、Fachsprachprüfungに合格することが大前提です。
- 資格の認定と短縮の交渉:ドイツの医師会に対し、日本での専門医資格を活かして研修期間の短縮を申請し、できるだけ早くFacharzt試験を受けられるようにすることがポイントです。
- 現地の病院とのコンタクト:ドイツの病院に直接応募し、日本での経験をアピールすることで、Facharztとしてのポジションに早く就く可能性があります。特に、研究実績や国際的なトレーニング経験が評価されやすいです。
まとめ
・まずは英語を話せるように。IELTS6.5以上
・ドイツ語能力証明B2 or C1以上
今回は前回の記事で「後回し」にしない技術という本でも触れさせて頂きましたが、目標のため具体的なロードマップを作るとのことでヨーロッパの病院、特にドイツに留学するために必要な語学力について調べてみました。
自分の理想として
2024年 英語IELTS5
2025年 英語IELTS6 ドイツ語能力試験A1/A2
2026年 英語IELTS6.5〜7 ドイツ語能力試験B1
2027年 ドイツ語能力試験B2
を目指して日々勉強しています。語学の勉強と同時に臨床・研究も行なって行かなければなりませんし、予定通りに勉強が進まないかもしれませんが、楽観的にも悲観的にもなり過ぎず日々自分がすることを見定めて1日1日有意義なものにしたいものです。今回、海外医学留学の語学についてのロードマップを挙げてみましたが間違い・不備もあるかもしれません。もし海外医学留学経験者の方がこの記事を読んで頂けたらご教授頂ければ幸いです。適宜ロードマップを訂正して目標に近づいていきます。